成年後見制度とは?認知症の親の財産管理を解説
本記事は一般的な情報提供を目的としており、弁護士・司法書士等の専門家による個別相談の代替となるものではありません。具体的な法律問題については専門家にご相談ください。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力(意思決定能力)が不十分な方を法律的に保護・支援するための制度です。判断能力が低下すると、悪質な訪問販売に騙されて高額な契約を結んでしまったり、自分に不利な契約をしてしまったりするリスクが高まります。成年後見制度を利用することで、「後見人」が本人に代わって財産の管理や法律行為を行い、本人の権利を守ることができます。
日本では高齢化の進展にともない、成年後見制度の利用者数は年々増加しています。2023年時点の統計では、全国で約24万件以上の後見等が開始されており、その約7割が認知症を原因とするものです。
成年後見制度の2つの種類
成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。大きな違いは、制度を利用する時点で本人の判断能力があるかどうかです。
法定後見
家庭裁判所が後見人を選任する制度です。すでに判断能力が低下している方が対象となります。判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3段階に分かれます。
| 種類 | 対象となる方 | 後見人等の主な権限 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力がほぼない方(重度の認知症など) | ほぼすべての法律行為を代理できる |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な方(中程度の認知症など) | 重要な法律行為(不動産売買・借金など)に同意・取消権 |
| 補助 | 判断能力が不十分な方(軽度の認知症など) | 申立てで定めた特定の行為に同意・取消権 |
任意後見
本人がまだ十分な判断能力を持っているうちに、将来後見人となる人を自分で選び、その人との間で公正証書を使って「任意後見契約」を締結しておく制度です。判断能力が低下した後に、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任することで効力が生じます。
任意後見の最大のメリットは、自分で後見人を選べる点です。信頼できる家族・知人・専門家(弁護士・司法書士など)と事前に契約できます。一方、法定後見では裁判所が後見人を選ぶため、希望する家族が選ばれないケースもあります。
法定後見の申立て手続き
申立てができる人
- 本人
- 配偶者
- 4親等以内の親族(子・孫・兄弟姉妹・叔父叔母など)
- 検察官
- 市区町村長(身寄りのない高齢者などの場合)
手続きの流れ
- 申立書類の準備:戸籍謄本・住民票・財産に関する資料(預金通帳・不動産登記事項証明書など)・収支状況がわかる書類を用意します。
- 医師の診断書の取得:家庭裁判所所定の書式による診断書が必要です。かかりつけ医に依頼します。
- 申立書の提出:本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書一式を提出します。
- 家庭裁判所の調査・審問:裁判所の調査官が本人・申立人と面接を行い、必要に応じて医師による鑑定が実施されます。
- 後見開始の審判:審判が確定すると、後見登記ファイルに記録されます。
- 後見人による業務開始:選任された後見人は財産目録の作成・定期的な財産管理報告などの義務を負います。
申立てから後見人選任まで、おおよそ1〜3か月程度かかります。
費用の目安
| 費目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 申立費用(収入印紙・郵便切手) | 約1万円 |
| 医師の診断書費用 | 5,000〜1万円程度 |
| 鑑定費用(必要な場合) | 5〜10万円程度 |
| 弁護士・司法書士への依頼報酬 | 10〜30万円程度 |
| 専門職後見人への月額報酬 | 2〜6万円/月(財産額による) |
申立て自体は弁護士等に依頼せず自分でもできますが、書類の準備が煩雑なため、専門家に依頼するケースが多いです。また、後見人に専門家(弁護士・司法書士・社会福祉士)が選任された場合は、本人の財産から月額の報酬が継続的に支払われます。
後見人の権限と義務
後見人は大きく「財産管理権」と「身上配慮義務」を持ちます。
財産管理権の具体例
- 預貯金の管理・出し入れ
- 不動産の売買(家庭裁判所の許可が必要)
- 医療費・介護費の支払い
- 税金の申告・納付
- 相続手続き
身上配慮義務:後見人は本人の生活・医療・介護・福祉に関する契約等を行う義務を負います。ただし、実際の介護行為や医療行為を行う義務ではありません。
後見人の報告義務:後見人は定期的(年1回)に家庭裁判所へ財産状況・収支を報告しなければなりません。報告義務を怠ると後見人を解任されることもあります。
活用すべき場面
成年後見制度を積極的に検討すべき具体的な場面をご紹介します。
- 認知症の親の不動産を売却したい:後見人がいないと、判断能力のない本人名義の不動産を売却できません。
- 施設入所の契約をしたい:有料老人ホームなどの入居契約に際し、後見人が代理人として契約します。
- 遺産分割協議に参加させたい:判断能力のない相続人がいると、そのままでは協議が成立しません。後見人を選任することで協議参加が可能になります。
- 悪質商法の被害を防ぎたい:後見人が契約を取り消す権限を持つため、不当な契約から守ることができます。
注意点
- 一度後見が開始すると、本人が亡くなるまで続くのが原則です(本人の判断能力が回復した場合は取消申立てが可能ですが、認知症の場合は現実的に難しいことが多いです)。
- 不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要で、時間がかかります。
- 後見人として申立てで候補者を指定できますが、最終決定は裁判所が行います。特に財産が多い場合や利害関係が複雑な場合は、弁護士・司法書士などの専門職後見人が選任されることも多いです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 任意後見と法定後見はどちらを選ぶべきですか? 判断能力があるうちは任意後見の準備を進めることが理想です。後見人を自分で選べる点が最大の利点です。すでに判断能力が低下している場合は法定後見の申立てしかできません。
Q2. 親族が後見人になることはできますか? 申立ての際に候補者として親族を指定することはできますが、最終的には裁判所が判断します。財産が多い場合、不正のリスクを考慮して専門職後見人が選任されることもあります。
Q3. 後見人は何でも自由に財産を使えるのですか? いいえ。後見人の財産管理は本人のためにのみ行われます。不動産の売却や多額の支出は家庭裁判所の許可が必要です。また、定期的な報告義務もあるため、不正行為が起きにくい仕組みになっています。
Q4. 後見人を変更することはできますか? 後見人が正当な理由なく辞任することは原則できませんが、家庭裁判所への申立てにより解任・辞任が認められるケースもあります。不適切な後見人については、後見監督人や裁判所への申告が可能です。
まとめ
成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産と生活を守るための大切な制度です。認知症の症状が進む前に任意後見契約を締結しておくことが理想ですが、すでに判断能力が低下している場合は法定後見の申立てを検討しましょう。
手続きは複雑で費用もかかりますが、後見人がいないことで不動産売却や遺産分割が進まず、家族全体が困るケースは多くあります。まずは地域の「成年後見センター」や弁護士・司法書士に相談することから始めてみてください。
成年後見制度の詳細については、出典: 官公庁のホームページを参照してください。
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法太郎
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